国際税務コラム

シンガポール雇用法・ビザ

Letter of Consent申請 ~EP保持者は別のシンガポール法人のDirectorに就任できるか?~

EP保持者は他のシンガポール法人のDirectorになれるか?

シンガポール会社法では、シンガポール法人は最低一名のシンガポールに住所がある居住取締役の設置をしなければならない、と規定しています。

 

シンガポール国籍・永住権を持っていて、シンガポールに住所がある方がDirector(取締役)に就任すれば「居住取締役」に該当することになります。

 

もしくはEmployment Pass(以下、「EP」)を保有していれば日本人の方でも「居住取締役」に該当することになります。

 

従って、新しくシンガポール法人を設立する際には、既に他のシンガポール法人でEPを取得してシンガポールに住んでいる方にこの「居住取締役」になってもらおう、というケースをよく見ます。

 

永住権を持っている方であれば特に問題はありません。しかし、EP保持者が他のシンガポール法人のDirectorに就任する場合には注意が必要です。

 

就任前にMOMの承認が必要

大前提として、EPはその発行元である会社で常勤として働くことを前提に許可されているものです。

 

そのため、他社のDirectorに就任する場合は事前にMOMからLetter of Consent(以下LOC)という承認レターを取得する必要があります。

 

事前承認の手続きを行ったことにより更新がリジェクトされるケースも実際に発生していますので、既に別のシンガポール法人のDirectorに就任しているにもかかわらずまだ承認をもらっていない場合は速やかに届出を行うことをお勧めいたします。

 

LOC取得要件 (次のいずれかの条件を満たすもの)

 

・EP発行元と他社との間に資本関係がある、もしくは本人がDirectorに就任しようとしている会社の株式を一部を保有していること

 

・EP発行元における業務内容と関連性があること

 


MOMのウェブサイトには審査期間は約5週間とありますが、審査の段階において追加書類や補足説明を求められるケースもありますので早めの申請をお勧めいたします。申請方法についてはウェブサイトをご参照ください。

 

MOMウェブサイト(外部)

 

LOCの有効期限に注意

また、LOCの有効期限は現在所持しているEPの有効期限となります。

 

つまりEPの有効期限日もしくはEPをキャンセルした日にLOCも自動的に失効します。

そのため、引き続き他社のDirectorに就く場合には、EP更新後、LOCの更新も行う必要がありますので、業務に支障をきたさないためにも早めにEP更新手続きを行っておくと安心です。

なお、万が一LOC申請が不許可になった場合は、EP保持者はEP発行元でしか就労できなくなります。

 

注:EP発行元とEP保持者が雇用契約を締結している場合には、LOCを取得する以前の問題でEP発行元が兼業を禁止している場合もありますので、事前にEP発行元に兼業の可否を確認されることをお勧めいたします。

 

 

執筆者:Taeka Kikui

 

※本記事は2018年6月4日時点の情報ですのでご留意ください。