【平成29年税制改正大綱】日本居住の外国人の多くが該当する『非永住者』に対する課税所得の範囲の見直し
※ 2017年10月18日 更新
目次
【平成29年税制改正大綱】非永住者の課税所得の範囲の見直し
2016年12月8日、政府与党から 『平成29年度 税制改正大綱』が公表されました。
その中から今回は国際税務の改正の一つである、『非永住者の課税所得の範囲の見直し』について説明します。
その他の国際税務に係る平成29年税制改正大綱についてはこちらをご覧下さい。
・国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲見直し(5年→10年に変更)
そもそも非永住者とは?
非永住者とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である個人を言います。
ですので、外国人で日本法人に出向している方の多くはこの『非永住者』に該当することになります。
非永住者に対する『海外の上場株式の譲渡所得』の課税関係
その非永住者に対する課税範囲で今回注目すべきは「海外の上場株式の譲渡所得」が課税対象となるかどうかです。
非永住者の中には外国の親会社の上場株式をRSUやストックオプションとして報酬を受け取っている場合も多く、その譲渡所得が日本で課税されるかどうかは非常に大きなインパクトがあります。
以下、非永住者に対する外国の上場株式の譲渡所得に対する課税について整理したいと思います。
2016年12月31日以前はどのような取扱いだったか?
まず、2016年12月31日以前の非永住者の課税範囲は、下記のいずれかとされていました。
① 国内源泉所得
② 国内源泉所得以外の所得で国内で支払われ、又は国外から送金されたもの
つまり、海外の上場株式の譲渡所得は「国内源泉所得以外の所得」に該当するため、国内で支払われるか、国外から送金されない限りは日本で課税されることはありませんでした。
しかし、平成26年度税制改正の影響で2017年1月1日以降はその取扱いが変わってしまっています。
平成29年度税制改正前(2017年1月1日~3月31日)の非永住者に対する課税範囲
平成29年度税制改正前(2017年1月1日~3月31日まで)の譲渡の場合、平成26年度税制改正の影響により取扱いが変わりますが、非永住者の課税範囲は所得税法第7条2項に下記の通り規定されています。
『非永住者 第九十五条第一項(外国税額控除)に規定する国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの』
つまり、下記が非永住者の課税範囲ということになります。
① 国外源泉所得以外の所得
② 国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの
『国外源泉所得』に該当する所得については、所得税法第95条1項及び4項に列挙されていますが、『海外の上場株式』はその国外源泉所得の範囲に含められていません。
つまり、平成29年度税制改正前(2017年1月1日~3月31日)の場合、『海外上場株式の譲渡所得』は非永住者の課税範囲である ①国外源泉所得以外の所得に該当してしまうため、その所得の全てについて日本で課税されることになります。
国内において支払われている(又は国外から送金されているか)を問わず、全て課税されることになります。
※ 一定の事業譲渡類似株式や不動産化体株式等の譲渡による所得については国外源泉所得に含まれますが、海外上場株式については国外源泉所得の範囲に含まれません。
平成29年度税制改正大綱での取扱い(2017年4月1日以後の譲渡)
これは平成26年度税制改正の予期せぬ影響によるもので、この課税関係を修正すべく平成29年度税制改正大綱において下記の通り記載されている、そのような流れになっています。
『非永住者の課税所得の範囲から、所得税法に規定する有価証券(過去10年以内において非永住者であった期間内に取得したもの(2017年4月1日以後に取得したものに限る)を除く。)で次に掲げるものの譲渡により生ずる所得(国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除く。)を除外する。
(1)外国金融商品取引所において譲渡されるもの
(2)国外において金融商品取引業等を営む者への売委託により国外において譲渡されるもの
(3)国外において金融商品取引業等を営む者の国外営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座に受け入れられているもの』
つまり、平成29年度税制改正が適用される2017年4月1日以後の『海外の上場株式の譲渡所得』については一定の場合は非永住者の課税所得の範囲から除かれることになります。ただし、下記の場合には課税範囲に含まれるため注意が必要です。
・ 譲渡の日から10年内の非永住者の期間中に取得し、かつ、2017年4月1日以後に取得したもの
・ 国内において支払われ、又は国外から送金されたもの
ただ、問題なのは平成29年度税制改正の適用開始は2017年4月1日以後とされているため、2017年1月1日~2017年3月31日までの間に行われた『譲渡』については平成26年度税制改正適用後の制度に基づいて課税されてしまうことになりそうです。
【まとめ】非永住者の海外上場株式の課税範囲
非永住者の海外上場株式の課税範囲についてまとめると下記の通りになります。
『譲渡日』によって、取扱いが異なります。
【2016年12月31日以前の譲渡所得】
原則課税対象外(国内で支払われるか、国外から送金される場合は課税)
【2017年1月1日~2017年3月31日までの譲渡所得】
原則課税(一定の事業譲渡類似株式や不動産化体株式の譲渡等は非課税)
【2017年4月1日以後の譲渡所得】
下記のいずれかに該当すれば課税
・ 取得日が2017年4月1日以降(※1)、かつ、取得日が譲渡の日から10年内の非永住者期間であるもの(一定の事業譲渡類似株式や不動産化体株式の譲渡等は除く)
・ 国内において支払われ、又は国外から送金されたもの
※1:経過措置(所得税法施行令附則3条)により、改正法の施行日前(2017年3月31日以前)に『取得』したものについては原則非課税になります。
いずれにしましても2017年1月1日~3月31日の間に『譲渡』することは避けた方がよさそうです。
***********************************************************
【Shimada & Associates 国際税務メルマガ】
国際的に活躍するすべての方を対象に月に一度のメルマガ(無料)を発行しております。よくある国際税務Q&Aやシンガポール情報にご興味がある方は、ぜひご活用頂ければ幸いです。
***********************************************************
※下記につきましては、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
✔︎国内・国際税務顧問をお探しの方
✔︎タックスヘイブン対策税制の適用除外要件を検討したい方
✔︎起業・法人設立を検討されている個人事業主・小規模企業の方(創業時から国際税務の観点からスキーム提案等のお手伝いをさせて頂きます。)
✔︎2国間以上の国際取引に係る税務のご相談
✔︎海外移住者・転勤者のための納税管理人
✔︎非居住者への源泉所得税
✔︎シンガポール移住・進出
まずは状況をお伺いしお見積書を作成させて頂きます(初回のお打ち合わせ及びお見積書の作成は無料となります)。