シンガポールにおける法人税の繰越欠損金・繰戻還付
※2018年5月2日に更新
目次
日本での繰越欠損金の期限は?
欠損が生じている場合、その欠損を繰越して将来の所得と相殺できるかどうかは資金繰りを考える上で非常に重要になってきます。
日本の繰越欠損金については最近よく改正されていますので注意が必要です。
平成30年4月1日以後に開始する各事業年度において生じた欠損金額については10年になります(それ以前に生じた欠損金額の繰越期間は異なりますのでご注意下さい)。
また、中小法人等以外の法人の各事業年度(更生手続開始の決定等の一定の事実が生じた法人や新設法人の一定の事業年度を除きます。)における控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額に対してそれぞれ次の率を乗じた金額とされています。
(1) 平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度・・・100分の65
(2) 平成28年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度・・・100分の60
(3) 平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度・・・100分の55
(4) 平成30年4月1日~開始事業年度・・・100分の50
(参考)国税庁ウェブサイト『No.5762青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除』(外部)
シンガポールでの繰越欠損金の期限は?
一方、シンガポールでは原則として繰越欠損金の繰越期間・金額ともに制限はありません。
ただし、『株主が実質的に(50%) 変動していないこと(Shareholding Test)』が条件になります。
これをクリアできていれば、欠損金は何年でも繰り越せる、ということになります。
(参考)IRAS ウェブサイト『Unutilised losses』(外部)
『株主が実質的に(50%) 変動していないこと(Shareholding Test)』ですが、どの時点の株主構成を比較して判断することになるのでしょうか。
損失が生じた事業年度末日が属する暦年の12月31日時点の株主と、その損失を控除しようとする賦課年度(事業年度末日が属する暦年の翌年)の1月1日時点の株主を比較することになります。
文章では理解しにくいため、以下設例で見ていきたいと思います。
<設例①>
2017年3月期にS$100,000の損失が生じ、2019年3月期にS$50,000の黒字となったため、2017年3月期に生じた欠損金を控除しようとしています。
この場合は、下記の時点の株主構成を比較します。
① 損失が生じた事業年度末日が属する暦年の12月31日 → 2017年12月31日
② 損失を控除しようとする賦課年度(事業年度末日が属する暦年の翌年)の1月1日 → 2020年1月1日
<設例②>
2017年12月期にS$100,000の損失が生じ、2018年12月期にS$50,000の黒字となったため、2017年12月期に生じた欠損金を控除しようとしています。
この場合は、下記の時点の株主構成を比較します。
① 損失が生じた事業年度末日が属する暦年の12月31日 → 2017年12月31日
② 損失を控除しようとする賦課年度(事業年度末日が属する暦年の翌年)の1月1日 → 2019年1月1日
例外的に当局の裁量により認められるケースも
『株主が実質的に(50%) 変動していないこと』ですが、合理的な理由があれば変動していたとしても、税務当局から繰越控除を認められるケースもあります。
例えば、事業目的の買収により株主が繰越欠損金の使用が目的でないことを説明することにより、認めてもらえる可能性もあります。
シンガポールの欠損金の繰戻還付(Loss Carry-Back Relief)
上記の逆のパターンになりますが、黒字から赤字になった場合には繰戻還付ができる可能性があります。ただし、繰戻還付ができる期間は過去1年間のみで、上限金額はS$100,000になります。
なお、欠損金の繰戻還付の適用を受けるためには申請が必要なため注意が必要です。
(参考)IRAS ウェブサイト『Loss Carry-Back Relief』(外部)
本記事は2018年5月2日の時点の記事ですのでご留意ください。