国際税務コラム

シンガポール法人税

シンガポール法人のグループローン利子 〜利率はどう設定すれば良いか〜

クロスボーダーのグループ間ローンに係る利子の利率

関係会社間のローンがクロスボーダー(例えば、シンガポール法人と日本法人とのグループローン)である場合、独立企業間価格に基づいて利子の利率を決定する必要があります。

 

独立企業間価格とは、端的に言うと「第三者との間で同条件下で同様の取引をした場合の価格」です。

 

理論的には何となくイメージが湧きますが、実務的には『実際にグループローンの利率を何%にすれば指摘されないのか?』、と悩むことになります。

 

シンガポールでは、2017年からグループローンの利率について「指標金利マージン」が明示されているため、シンガポール法人としては一定の要件を満たせばこの「指標金利マージン」を使用しても良いことになります。

 

シンガポールにおけるグループローンの指標金利マージン(Indicative margins)

シンガポールの税務当局IRASは、それぞれS$15,000,000(1SGD=80円の場合、約12億円)以下のグループ会社間のローンについて適用することができる「指標金利マージン」を明示しています。

 

2017年1月1日~2017年12月31日の間に行われるS$15,000,000以下のグループローンについては、指標金利マージンは『2.50%』です。

 

あくまでもこれはマージンですのでご注意下さい。

 

指標金利マージンは毎年公表される

IRASは毎年、年初にその年の指標金利マージンを公表することになっています。

 

指標金利マージンを使用しなければならない、という訳ではなくあくまでも移転価格ガイドラインの分析に基づいた独立企業間価格を使用することもできます。

 

ただ、この分析には多額の費用と時間を要しますので、このような指標金利マージンをしても良いというのは実務的には非常に有難いのではないでしょうか。

 

指標金利マージンを使用した利率の算定方法

もしシンガポール法人として指標金利マージンを使用することを選択した場合、適切なベースとなる利率に『指標金利マージン』を上乗せした利率を算定します。

 

具体的には下記IRASのウェブサイトにある設例が参考になります。

 

【設例】

① 2017年1月1日にシンガポール法人が関係会社にS$100,000(変動金利)の貸付をした。

 

② シンガポール法人は関係会社間ローンのベースとなる利率としてSingapore Inter Bank Offered Rate (“SIBOR”) を使用した。

 

③ シンガポール法人は指標金利マージンを使用することを選択した。

 

→ この場合は関係会社間ローンの利率は2.50% プラス SIBORになります。

 

S$15,000,000を超えるグループローンは?

S$15,000,000を超えるグループローンについては、移転価格文書化が必要になるため、上述の『指標金利マージン』は使用していたとしても、移転価格ガイドラインに従った分析が必要になります。