国際税務コラム

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非居住者の日本法人からの役員報酬は日本の不動産所得の損失と損益通算(相殺)できない

非居住者の日本法人からの役員報酬は日本の不動産所得の損失と損益通算できるか?

海外に住んでいる非居住者が日本法人から役員報酬を受け取る場合には、日本で源泉されることになります。

非居住者が日本法人から役員報酬を受け取ったら?

 

さらに日本で不動産所得の損失が生じている場合、日本で確定申告をすることによりその源泉された所得税の還付を受けることができるのか? というご質問を受けることがあります。

 

税理士等の専門家でも『申告すれば還付できる』と考えている方も多いのですが、現行法では損益通算はできません

 

2016年以前は不動産所得が事業的規模であれば還付できる可能性があった

2016年以前はその不動産所得が事業的規模かどうかがポイントとなっていました。

 

その不動産所得が事業的規模(日本での恒久的施設『PE』と認められる)である場合には、役員給与と事業的規模の不動産所得に係る損失を損益通算することにより還付を受けられる可能性がありました。

(国税庁タックスアンサー)不動産貸付けが事業として行われているかどうかの判定

 

しかし、2017年以後については税制改正により、非居住者が国内に恒久的施設『PE』を有する場合であっても、そのPEに帰属する所得かどうかで課税方法が変わることになりました。

 

2017年以後の取扱い(恒久的施設の帰属所得の考え方)

国税庁のウェブサイトには2017年以降の恒久的施設帰属所得について下記の通り記載されています。

 

『非居住者等に対する課税では、「国内源泉所得」のみが課税対象とされますが、同じ「国内源泉所得」であっても、その支払を受ける非居住者等の「恒久的施設」の有無、その「国内源泉所得」が「恒久的施設」に帰せられる所得かによって、課税関係が異なってきます。

 

例えば、「恒久的施設」を有する非居住者に対する使用料等の対価について、その対価が恒久的施設に帰せられる所得である場合は、原則として源泉徴収の上、総合課税の対象とされますが、その対価が恒久的施設に帰せられない所得である場合は、原則として源泉分離課税の対象とされます。また、「恒久的施設」を有しない非居住者に対する使用料等の対価については、源泉分離課税の対象とされます。』

 

日本法人からの役員報酬は不動産所得に係る恒久的施設に帰属する所得ではないため『源泉分離課税』により完結

日本法人からの役員報酬は恒久的施設に帰属する所得とは考えられないため、原則として「源泉分離課税」により完結されることになります。

 

従って、総合課税により不動産所得に係る損失と損益通算をすることはできませんのでご注意下さい(所得税法164条)。

 

※本記事は2018年2月2日時点の情報ですのでご留意ください。