海外移住後に退職年金を受け取る場合は日本で課税される?
海外移住後に受領する退職年金の課税関係
海外へ移住した後に退職年金を受け取る場合、日本で源泉徴収はされるのでしょうか?
まずは日本の国内法を見ていきたいと思います。
日本の国内法
非居住者が公的年金を受け取った場合、年金支給額から一定額を控除した金額の20.42%の源泉徴収が必要になります。源泉徴収で課税が完結しますので、確定申告は不要です。
源泉徴収税額の計算式は下記の通りです。
源泉徴収税額 = {年金支給額 – (6万円(年齢が65歳以上の場合は10万円) x 支給月数)} x 20.42%
ただし、日本が租税条約を締結している国へ移住する場合には、日本と移住先の国との租税条約により、日本での源泉徴収が免除されるケースもあります。
租税条約により日本での源泉徴収が免除されるケースもある
アメリカやシンガポール、香港、スイスなどに移住する場合には、日本と各国との租税条約で「居住地国でのみ課税」と規定されているため、租税条約の届出書を提出することにより日本での源泉徴収20.42%が免除されます。
従いまして、移住する国と日本との間の租税条約でどのように規定されているかどうかを必ず確認する必要があります。
例えば、日本・シンガポール租税条約では下記のような規定があります。
『第18条 退職年金: 次条2の規定が適用される場合を除くほか、過去の勤務につき一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬及び一方の締約国の居住者に支払われる保険年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。』
なお、日本での源泉徴収が免除されたとしても、移住先の国でその所得について課税される可能性もありますので、移住先の国の規定も確認する必要があります。
免除の適用を受けるためには租税条約の届出が必要
留意しなければならないポイントは、『免除の適用を受けるためには租税条約の届出が必要』というところです。
届出がされていない場合は、国内法の原則に基づき、源泉徴収されることになりますので注意が必要です。
具体的には、その公的年金の支払者(社会保険事務所)に「年金の支払を受ける者に関する事項」を提出するとともに、最初の年金の支払いを受ける日の前日までに「租税条約に関する届出書 様式9」を提出する必要があります。
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