国際税務コラム

国際税務

非居住者が日本国内の不動産を売却・賃貸した場合の税金はどうなる?

<<For Non-Japanese Speakers>>

Please refer to our English article “Japan real estate income tax, capital gain tax for Non-resident individuals (foreigners)”

 

<<弊社での「2018年度・非居住者である外国人(日本不動産オーナー)の確定申告代行サービス」について>>

 日本の不動産オーナーである外国人より直接英語で弊社にお問い合わせ頂くケースもございますが、不動産会社の方より外国人の不動産所得に係る個人所得税申告を一括で外注頂くケースも多くございます。提携などのご相談もお気軽にご連絡頂ければ幸いです。外国人の方と直接英語でやり取りさせて頂くことも可能です。

 

【参考費用】

費用は別途お見積りさせて頂きますが、例えば非居住者で日本国内で不動産所得のみを有する場合は、納税管理人費用も含めて120,000円+税/人となります。

 

お問合せフォームでは24時間受け付けております。お気軽にご連絡下さい。

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非居住者等が日本国内にある土地・建物を売却する場合

非居住者が日本国内にある不動産(土地・建物)を売却する場合、その譲渡益について日本で確定申告・納税をする必要があります。

不動産売却に係る譲渡所得については、他の所得とは分離して課税(申告分離課税)されることになります。

次のとおり、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。

・長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの):15.315%

・短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの):30.63%

 

上記の通り、非居住者が日本の不動産を売却する場合は日本で確定申告する必要がありますが、非居住者にとって注意が必要なのは売却時に源泉徴収される可能性がある点です。逆に購入者側としては、非居住者から購入する場合には源泉漏れがないように注意する必要があります。

源泉徴収されている場合には、確定申告を行う際に精算することになります。

日本の所得税法上の居住者とは?

 

源泉徴収に係る日本の国内法(原則)

日本の所得税法上は、非居住者や外国法人(以下、「非居住者等」)から日本国内にある土地等を購入して、その譲渡対価を国内で支払う者は、非居住者等に対して対価を支払う際に、10.21%の税率で、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

日本国内にある「土地等」には、土地の他、土地の上に存する権利、建物及びその付属設備、構築物が含まれます。ただし、鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)、温泉を利用する権利、借家権及び土石(砂)などは含まれません。

なお、この場合の源泉徴収義務者は「土地等の譲渡対価の支払をする者」であるため、給与の支払者であるかどうかは問わず、一般のサラリーマンなども非居住者等に対して土地等の譲渡対価を支払った場合には、原則として源泉徴収義務者になるため、注意が必要です。

 

例外:個人の自己居住用+1億円以下なら源泉不要

個人の方が自己又はその親族の居住の用に供するために、非居住者等から土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合には、その個人の方は、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

従って、法人であれば源泉徴収が必ず必要になります。

なお、1億円を超えるかどうかの判定に当たっては、例えば、当該土地等を居住の用と居住の用以外の用とに供するために譲り受けた個人から支払われるものである場合には、居住の用に供する部分に係る対価の金額及び居住の用以外の用に供する部分に係る対価の金額の合計額により判定することになっているため、注意が必要です。

それでは、具体的にシンガポール居住者やシンガポール法人が日本国内の不動産を売却した場合の取扱いをご紹介します。日本の国内法は上述の通りですが、日本・シンガポール租税条約も確認する必要があります。

 

日星租税条約の取扱い

日本・シンガポール租税条約第13条において、下記の通り、土地等の不動産の譲渡対価について、不動産の所在する国においても課税できるとする規定が置かれています。つまり、日本に所在する土地等については日本でも課税できることになりますので、日本国内法に従って申告・納税する必要があります。

 

第13条(譲渡収益)1. 一方の締約国の居住者が第6条に規定する不動産で他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。(2.以下省略)

 

なお、わかりやすくするため、シンガポールを例に説明していますが、シンガポール以外の国との租税条約においても、日本で課税できることになっていますので、基本的には結論は同じになると考えられます。

 

非居住者の日本での不動産所得も確定申告が必要?

上記では非居住者が日本の不動産を売却した場合を見ましたが、それでは海外勤務等により非居住者となる人が国内にある不動産の貸付けによる所得(不動産所得)があるときはどうなるでしょうか。

この場合も日本で確定申告(総合課税)が基本的には必要になります。

確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定め、「所得税の納税管理人の届出書」を、その人の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。

 

納税管理人の詳細につきましては下記も合わせてご参照下さい。

非居住者の納税管理人とは?

 

不動産の賃借料に対する源泉徴収

非居住者の不動産譲渡と同様に、賃借料についても源泉徴収について注意が必要です。

非居住者や外国法人から日本国内にある不動産を賃借して、日本国内で賃借料を支払う者は、非居住者等に対して賃借料を支払う際に、20.42%の税率で、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

 

例外:個人の自己居住用なら源泉不要

個人の方が自己又はその親族の居住の用に供するために、非居住者等から不動産を借り受けている場合には、その個人の方は、賃借料支払の際源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

 

結論

【非居住者の日本国内の不動産譲渡】

非居住者等が国内にある不動産を譲渡した場合には、日本の国内法の規定に従って、日本で確定申告(申告分離課税)を行う必要があります。

また、売却時に源泉徴収される可能性がありますので、その場合は確定申告時に精算されることになります。

譲渡所得の金額の計算方法は、居住者の場合と同様です。

 

【非居住者の日本国内の不動産賃貸所得】

この場合も日本で確定申告(総合課税)が基本的には必要になります。

 

いずれの場合も源泉徴収されている場合はありますので、その場合は確定申告において精算します。

逆に非居住者への支払側(非居住者から不動産を買う方や非居住者に賃借料を支払う方)は源泉徴収漏れがないように注意が必要です。

 

確定申告期限は、翌年2月16日から3月15日までですが、確定申告書を提出するときまでにあらかじめ納税管理人を定め、「所得税の納税管理人の届出書」を非居住者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。

納税管理人の詳細につきましては下記も合わせてご参照下さい。

非居住者の納税管理人とは?