日本の移転価格税制の対象となるのはどのようなケース?
日本の移転価格税制
移転価格税制とは、実際の取引価格ではなく、独立企業間において通常設定される価格(独立企業間価格)を用いて、その価格を基に課税所得を計算する税制です。
日本にも移転価格税制が租税特別措置法第66条の4に規定されています。
そこでの基本的な考え方は下記の通りです。
「法人が各事業年度において、国外関連者との間で行う資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引につき、その法人がその国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又はその法人がその国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、その国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす」
例えば、法人が国外関連者に実際に100を支払っているとしても、独立企業間価格が80であれば、税務上は80が取引価格とみなされるため、残りの20は損金には計上できないことになります。
独立企業間価格とは
独立企業間価格については、租税特別措置法66条の4②に下記の通り規定されています。
「国外関連取引が棚卸資産の販売又は購入とそれ以外の取引のいずれに該当するかに応じ、その国外関連取引の内容及びその国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して、その国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法により算定した金額」
具体的にはその取引に応じて、最も適切な方法(独立価格比準法や再販売価格基準法、原価基準法など)を基に算定することになります。算定方法については、複雑なため専門家にご相談頂くことをお勧め致します。
ここでは、そもそも日本の移転価格税制の対象となるかどうかに焦点を当てて解説させて頂きます。
移転価格税制は個人には適用されません
冒頭でも触れました通り、移転価格税制は「法人が各事業年度において、国外関連者との間で行う・・・・」と規定されています。
つまり、法人のみが対象となり、個人は移転価格税制の対象には入っていません。
なお、法人には下記が含まれています。
・ 代表者又は管理人の定めのある人格のない社団等
・ 我が国に支店等の恒久的施設を有する外国法人
・ 不動産の譲渡所得等を有する外国法人
また、移転価格税制は「国外関連者」との間で行う一定の取引が対象となります。
つまり、「国外関連者」との取引でなければ移転価格税制の対象ではなくなるため、「国外関連者」に該当するかどうかは非常に重要になります。
国外関連者とは
国外関連者とは、外国法人のうち、法人と「特殊の関係」を有するもの、と規定されています。
「特殊の関係」とは、次のようなケースを言います。
① 親子関係
「2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除きます)の発行済株式等の50%以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係」
② 兄弟関係
「2つの法人が同一の者によって、それぞれの発行済株式等の50%以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有される場合における当該2つの法人の関係」
③ 実質支配関係
「次に掲げる事実その他これに類する事実(以下、「特定事実」)が存在することにより、2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係」
<役員及び使用人の状況>
・ 他方の法人の役員の2分の1以上又は代表する権限を有する役員が、その一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又はその一方の法人の役員若しくは使用人であった者であること
・ 一方の法人の2分の1以上又は代表する権限を有する役員が他方の法人によって実質的に決定されていると認められている事実があること
<事業活動の状況>
・ 他方の法人がその事業活動の相当部分をその一方の法人の取引に依存して行っていること
<資金調達及び保証の状況>
・ 他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分をその一方の法人からの借入れにより、又はその一方の法人の保証を受けて調達していること
<無形資産の状況>
・ 一方の法人が他方の法人から提供される事業活動の基本となる著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権及び商標権をいう。)、ノーハウ等に依存してその事業活動を行っていること。
④ 連続する特殊関係
「法人と上記①~③の「特殊の関係」のある法人が、別の法人と「特殊の関係」にある場合における、その法人と別の法人の関係」
例えば、ある日本の法人が外国法人Aと実質支配関係があり、さらに外国法人Aが外国法人Bと実質支配関係がある場合、外国法人Aだけでなく、外国法人Bも「国外関連者」に該当します。
資本関係がない場合も移転価格税制の対象になり得る
上記の通り、資本関係だけではなく、実質支配関係がある場合も移転価格税制の対象となるため、その対象は広いと言えるのではないでしょうか。
例えば、移転価格税制の対象外にさせたいと考え、資本関係を持たせず個人株主でシンガポール法人を設立して、事業資金は別途日本法人から送金しているようなケースです。
資金調達の状況からみて、その日本法人とシンガポール法人には「実質支配関係」があるとして、このようなケースも移転価格税制の対象となる可能性があります。
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