非居住者が国内の仮想通貨取引所で仮想通貨を譲渡したら日本で課税されるか?
目次
非居住者が日本の仮想通貨取引所で仮想通貨を譲渡したら日本で課税されるか?
基本的に非居住者については、日本国内で稼得した『国内源泉所得のみが課税対象』となります。
従いまして、『国内源泉所得』に該当するかどうかがポイントとなります。順を追って条文を見ていきたいと思います。
所得税法第161条(非居住者の国内源泉所得)
国内源泉所得については、所得税法第161条各号に規定されています。仮想通貨に関係がありそうなものは下記の2号・3号・17号でしょうか。
・所得税法161条2号(国内資産の運用・保有による所得)
・所得税法161条第3号(国内資産の譲渡所得)
・所得税法161条第17号(その他、国内所得として一定のもの)
所得税法161条第3号をまずは見ていきたいと思います。
所得税法161条3号(国内資産の譲渡所得)に該当するか?
161条3号(国内資産の譲渡所得)に該当する所得について所得税法施行令第281条に委任されています。
限定列挙ですので、下記①~⑧に含まれていなければ国内源泉所得となる国内資産の譲渡所得には該当しない、ということになります。
仮想通貨は①~⑧のいずれにも該当しないため、所得税法第161条3号には該当しません。
ただし、次に見ていく161条2号や17号が関係してくる可能性も考えなければなりません。
所得税法161条2号(国内資産の運用・保有による所得)に該当するか?
仮想通貨による所得が「譲渡」によるものであると解釈できる場合には、そもそもこの2号を検討する必要があるのか判断が分かれるのかもしれませんが、次に所得税法161条2号(国内資産の運用・保有による所得)も見ていきます。
こちらの所得は所得税法施行令280条に『例示列挙』されており、国内資産の運用・保有による所得には下記のものが含まれると規定されています。
仮想通貨は上記①~③の例示列挙には含まれていません。
ただし、所得税法施行令280条は限定列挙ではなく『例示列挙』である点を鑑みると、所得税法第161条2号には該当しないと言い切るのは少し怖いように感じます。
所得税法161条17号(その他、国内所得として一定のもの)に該当するか?
仮想通貨が上記⑥「資産に関し供与を受ける経済的な利益に係る所得」に含まれると指摘されることがあり得るのでしょうか。ここも解釈が分かれる可能性があります。
なお、繰り返しになりますが、仮想通貨による所得が「譲渡」によるものと解釈できる場合には、そもそもこの2号や17号を検討することに意味はありません。が、そもそも仮想通貨とは何かというところから議論される必要があるのでしょう。普通に考えればモノの売却は「譲渡」になると考えられるのでしょうが、仮想通貨は今までになかった技術を利用した新しいものですし、今までには想像できなかった解釈も出てくるかもしれません。仮想通貨の定義・本質から理解する必要があるのでしょう。仮想通貨の取引形態や種類等によっても変わってくるかもしれません(あくまでも著者の私見ですのでご参考までに)。
税務大学校の「仮想通貨の税務上の取扱い -現状と課題-」
税務大学校の「仮想通貨の税務上の取扱い -現状と課題-」の中で、問12-2「非居住者及び外国法人であっても、ビットコインの国内交換所で経済的利益が発生した場合、一般論として課税対象になり得るという理解でよいか、政府の見解を示されたい。」という質問に対する政府の過去の答弁が記載されております。
『一般論としては、所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者又は法人税法代2条第4号に規定する外国法人については、所得税法第7条第1項第3号若しくは第5号又は法人税法第9条第1項に規定する国内源泉所得を課税の対象としており、その対象に該当しない場合には、課税の対象とならない。』
この答弁を見る限りでは最後が「課税の対象とならない」と言っているものの、どちらとも取れるような気がします。
何とも歯切れが悪くなってしまいましたが、いずれにしましても、所得税法161条3号の「国内資産の譲渡所得」には該当しないと考えられますが、所得税法161条2号や17号に仮想通貨が該当する可能性があるのか、明確な指針が欲しいところです。
なお、上記以外にも非居住者・居住者判定の問題なども慎重に検討する必要がありますので必ず専門家にご相談頂くことをお勧め致します。
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※本記事は2018年1月5日現在の法令に基づいております。