国際税務コラム

シンガポールGST(消費税)

【シンガポール】輸入サービスに関するGSTのリバースチャージ制度・国外事業者のGST登録制度が2020年から開始

輸入サービスに係るGSTのリバースチャージ制度

2018年シンガポール予算案にて、シンガポールで消費されるImported Services (以下、『輸入サービス』)についてGSTが課税されることが発表されました。

 

日本でも既に導入されているリバースチャージですが、基本的な考え方や制度の枠組みは同じです。

(国税庁ウェブサイト)国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について

 

シンガポールでのGSTリバースチャージ制度の概要

シンガポールのGSTはシンガポール国内での消費に対して課される税です。

 

サービス提供者がシンガポール国内か国外かに関わらず、シンガポール国内で消費される全てのサービス(免税取引を除く。)に対して課税されるものです。

 

現行の制度では、シンガポール国内のサービス提供者によって行われるサービスがGST課税の対象とされる一方で、シンガポール国外のサービス提供者によって行われるサービスはGSTが課税されないことになっています。

 

シンガポール国内で消費される全てのサービスに係るGSTの取扱いの均衡を図るために、シンガポール政府は2018年度予算案にて、『輸入サービス』に対してGSTを課税する下記制度を2020年1月1日から開始することを公表しました。

 

① B to B の輸入サービス ⇒ リバースチャージ制度

② B to C の輸入デジタルサービス ⇒ シンガポール国外事業者によるGST登録制度

 

 

「B to B」はリバースチャージ制度を適用し、「B to C」はシンガポール国外のサービス事業者がシンガポールにおいてGST登録事業者となる制度が適用されることになります。つまり、「B to B」と「B to C」でそれぞれ、異なる制度が適用されることになりますが、「B to B」と「B to C」のそれぞれの定義は下記の通りです。

 

・B to B (Business-to-Business) : GST登録事業者に対して行われるサービス

・B to C (Business-to-Consumer) : GST登録事業者ではない者(個人も法人も含む)に対して行われるサービス

 

※ シンガポール法人であったとしてもGST登録をしていない法人の場合は「B to C」に該当するため、注意が必要です。

 

B to Bに適用される『リバースチャージ制度』

①サービスを受ける側がGST登録事業者(非課税取引を行う銀行等・ボランティア慈善団体等)である場合

次のいずれかに該当する場合は、海外事業者から提供を受ける全ての『サービス輸入』についてGSTを考慮する必要があります。言い換えますと、サービスを受ける側がサービス提供者の代わりにOutput GST(仮受GST)を認識する必要があります(なお、一部、リバースチャージの対象外となるものもあります)。また、それと同時にInput GST(仮払GST)も認識して、GSTの計算を行うことになります。

 

① Input tax(仮払GST)について全額控除できないGST登録事業者(銀行や住宅用不動産のリース・販売会社等のGST非課税取引を行う一定の事業者)

② 事業に該当しない寄付等の受取を行うチャリティやボランティア慈善団体であるGST登録事業者

 

②サービスを受ける側が上記①以外のGST登録事業者である場合

「リバースチャージ制度」は適用されないため、特に処理は不要となります(今までと同じ)。

 

※ただし、将来的にInput taxの全額が控除できなくなる可能性がある場合には継続して輸入サービスに係るGSTを集計しておく必要があるため、一時的にリバースチャージ制度が適用されていない時期においても任意でリバースチャージ制度を適用することは可能とされています。

 

③サービスを受ける側がGST登録事業者ではない場合

12ヵ月間の輸入サービスの合計額がSGD1,000,000を超えた場合(又は超えることが見込まれる場合)には、GST登録をする義務が生じます。

GST登録後はリバースチャージの対象となる輸入サービスに係るOutput GSTも含めてGST申告を行う必要があります。

 

ただし、輸入サービスの合計額がSGD1,000,000を超える場合であったとしても、GST登録を仮にした場合に、Input GSTを全額控除できる事業者であれば、特にGST登録は不要とされています。

 

つまり、上記①のような非課税取引等を行う銀行等に該当しなければ、ここでも特に対応は不要、ということになります。

 

B to Bの結論

GSTの非課税取引を行う銀行や居住者不動産のリース・販売会社等、又ボランティア慈善団体等に該当しない場合には、GST登録事業者であろうがなかろうが、「リバースチャージ制度」について特に追加で作業が必要になることはないと考えられます。

 

B to B についての詳細はこちらもご参照ください。

(IRAS Website)GST: Taxing imported services by way of reverse charge

 

B to Cに適用される『シンガポール国外事業者によるGST登録制度』

どのような場合にシンガポール国外事業者がGST登録する必要があるか?

シンガポール国外の事業者で下記両方に該当する場合には、シンガポールでGST登録を行い、シンガポール国内でのB to Cの輸入デジタルサービスに係るGSTを申告・納税する必要があります。

 

① 年間売上高がSGD1,000,000を超え、かつ

② そのうちシンガポール国内での電子的なサービスに係る売上高がSGD100,000を超える事業者

 

どのようなデジタルサービスが対象になるか?

全てのデジタルサービスが適用対象になるとされていますが、例えばダウンロードすることができるコンテンツ(スマホアプリや電子書籍や映画)、登録型のメディア(ニュース、雑誌、TVや音楽のストリーミング)、ソフトウェア・プログラム、電子データの管理サービス(ウェブサイトホスティングやクラウドストレージ)などが含まれます。

 

なお、弁護士等のプロフェッショナルサービスなどについてはE-mailでコンサルティングを受けていたとしてもデジタルサービスには含まれないとされています。

 

詳細はこちらもご参照ください。

(IRAS Website)GST: Taxing imported services by way of an overseas vendor registration regime

 

 

 

※本記事は2018年7月5日時点の情報に基づき執筆した記事ですのでご留意ください。また、個別案件につきましてはより詳細に検討が必要ですので専門家に必ずご相談下さい。