国際税務コラム

シンガポール雇用法・ビザ

【シンガポール労働法】シンガポールにおける雇用契約書の重要性

最近のシンガポール労働法(改正後)

これまでのシンガポール労働法は日本に比べて雇用側に有利な制度であると言われてきましたが、近年、労働者の保護を図る動きが多く見られるようになっています。

 

その例として2016年4月から雇用法適用となる従業員に対して給与明細や雇用契約書の発行が義務付けられており、また雇用側はこれらの書類管理の徹底も求められていることから、給与未払いや不当解雇に係る紛争防止・対策への意識がますます高まっていることがうかがえます。

 

雇用法適用となる従業員に対する給与明細の発行義務化についてはこちら

 

シンガポール労働法は全ての労働者を守っているわけではない

シンガポールは日本のように全ての労働者が雇用法に守られているわけではなく、この雇用法の適用有無によって契約の取り決めも違ってきます。

 

紛争の多くは未然に防げた事案もありますので、雇用側が有利だからと安易に鵜呑みにせず、予めきちんと対策を取る必要があると言えます。

 

シンガポールにおける雇用法の適用範囲

シンガポールにおける雇用法の適用範囲は下記の通りです。

 

【シンガポールにおける雇用法の適用範囲】

 

解雇通知が問題になりそうになった事例も

勤務態度に問題がある社員に解雇通知を渡したら、不当解雇だとして告訴されそうになった事例もあります。

 

シンガポールの雇用法上、解雇通知期間を守っていれば(もしくは通知期間分の手当を払えば)、解雇事由の開示は原則不要と言われていますが、これは雇用法適用内の場合に該当します。

 

※なお、出産休暇中の解雇等、不当解雇とみなせば退職日から1ヶ月以内であれば雇用法適用内の従業員はシンガポール人財省:Ministry of Manpower(以下、「MOM」)に通報する権利があります。

 

また、解雇事由の開示は義務付けられていないものの、MOMも開示を推奨しています。

 

 

今回の事例では、告訴しようとした社員は月給$4,500以上の管理職社員でした。つまり、雇用法適用外の社員です。

 

この場合、雇用法に従う義務はなく、会社と本人との交渉の末に成立した契約内容に委ねられますので、解雇についての規定も予め契約書に明記されている必要があります。

 

ただ、実際契約書に明記されていたのは“違法行為を行った場合”とかなり曖昧な表現で、さらに勤務態度の悪さを裏付ける資料がなかったことがトラブルの要因となっていました。

 

雇用契約書の作成は重要

このように、MOMが公表しているサンプルをもとに雇用契約書を作成し、会社が急成長して従業員が増えた頃に紛争に繋がるケースは珍しくありません。

 

こうした事態を避けるためにも、本当にその契約内容が今のシンガポール労働法に適しているのか、法的に有効なのか、自社に合った内容なのか等、一度見直しをされると安心です。

 

雇用契約書のカスタマイズが必要な場合も

これから雇用契約書を作成される場合には、まず雇用法適用の有無、役職、事業内容等をもとに、どの程度カスタマイズが必要かを確認されることをお勧めいたします。

 

例えば、ソフトウェアを開発している企業であれば、Intellectual Property Rights(知的財産権)保護のためにも、一定の秘密保持義務を課すことが重要とされていますが、特に転職が活発なシンガポールにおいては在職中のみならず、退職後も合理的な範囲内で課すことも一般的です。

 

また、秘密情報の範囲を具体的に明記しておくことも認識のズレ防止になります。

 

多民族国家であるシンガポールは日本と解釈の仕方が違うことも多く、その認識不足が後々誤解を生むことになりますので、直接的な言葉を選んで作成するのがトラブル回避に役立つと考えられます。

 

シンガポール弁護士との連携も重要

カスタマイズが必要な場合にはシンガポール現地の弁護士に依頼する必要があるでしょう。

 

弊社では現地のシンガポール人弁護士とも提携をしておりますので、就労ビザ取得から雇用契約書・就業規則まで、雇用に関するサポートをご提供しております。お困りの際にはお気軽にご連絡下さい。

 

 

執筆者:Taeka Kikui

 

なお、本記事は2017年12月23日時点の情報ですのでご留意ください。