国際税務コラム

国内税務(日本)

平成27年税制改正により創設された財産債務調書制度とは

財産債務調書制度の趣旨

平成27年度税制改正において、所得税・相続税の申告の適正性を確保する観点から、「財産及び債務の明細書」を見直し、一定の方を対象に(対象の方については後述します)、その保有する財産及び債務に係る調書の提出を求める制度が平成28年1月から施行されました。

既に施行されている制度ではありますが、国税庁から「財産債務調書の提出制度(FAQ)」が2016年11月に公表されましたので、改めてその制度の概要についてご紹介したいと思います。

 

どのような方が財産債務調書の提出義務がある?

下記の両方の条件を満たす方は、その財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した財産債務調書を提出しなければなりません。

✓ 所得税等の確定申告書を提出しなければならない方で、その年分の退職所得を除く各 種所得金額の合計額が2,000万円を超えている

✓ その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有している

 

「国外転出特例対象財産」とは、有価証券等や未決済信用取引等、未決済デリバティブ取引に係る 権利をいいます。

国外転出時課税制度とは?

 

財産債務調書は非居住者も対象になる

上記の通り、提出義務の判定で特に居住者か非居住者かどうかは含まれていないため、非居住者であったとしても、上記条件を満たした場合は、財産債務調書の提出義務が生じることになります。

 

財産債務調書の提出期限

財産債務調書は、その年の翌年の3月15日までに所得税の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

つまり、2016年分については2017年3月15日までに提出することになります。

なお、財産債務調書の提出に当たっては、財産債務調書に記載した財産の価額及び債務の金額をその区分ごとに合計した金額を記載した、「財産債務調書合計表」を添付する必要がありますのでご注意下さい。

 

財産債務調書を提出しなかった場合の罰則

今までも「財産及び債務の明細書」という似たような制度がありましたが、特に提出しないことによる罰則規定はありませんでした。

しかし、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合(又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)が生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されるというペナルティがありますでの注意が必要です。

逆に、きちんと提出していた場合には、財産債務調書に記載がある財産 又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%軽減されることになります。 

 

国外財産調書を提出する場合も、財産債務調書は別途提出する必要はある?

「財産債務調書」と似た制度として、「国外財産調書」というものがあります。

国外財産調書とは、平成24年度税制改正で創設されたもので、居住者(「非永住者」の方を除く)の方で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、その財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに提出しなければならない、という制度です。 

国外財産調書の提出制度(FAQ)

 

似ている制度ですが、「国外財産調書」を提出する方も、「財産債務調書」の提出要件を満たす方は「財産債務調書」も別途提出する必要があります。

ただし、国外財産の明細は既に「国外財産調書」に記載されていることから、「財産債務調書」には国外財産に関する事項(国外財産の価額を除く。)の記載は必要ないこととされています。

つまり、「財産債務調書」には、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」及び「国外財産調書に記載した国外財産のうち国外転出特例対象財産の価額の合計額」のみを転記すればよいことになります。

 

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