国際税務コラム

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レンタルオフィスはタックスヘイブン対策税制適用除外要件の「実体基準」を満たすのか?

タックスヘイブン対策税制の適用除外要件の一つ『実体基準』

タックスヘイブン対策税制には、適用除外要件4つがあり、これらの全てを満たせば適用除外となり合算課税はされないことになります(※ただし、資産性所得(改正後は受動的所得)がある場合は課税される可能性があります)。

従って、適用除外要件を満たしているかどうかが実務的には非常に重要になってきますが、その要件の一つに『実体基準』というものがあります。

その実体基準とは、『特定外国子会社等がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域に、その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場、その他の固定的施設を有しなければならないこと』、とされています。

 

それでは、スタートアップ企業の多くが利用している『レンタルオフィス』はこの実体基準を満たしているのでしょうか?

結論としては、『レンタルオフィスが事務所等の固定施設に該当するかどうかは、自己所有であるかどうかは問題でなく、またその固定施設の規模についてはその業種・事業形態に応じて判断すべきである』と解されています。

つまり、レンタルオフィスだからと言って、直ちに「実体基準」を満たさないというわけではありません。

レンタルオフィスについての解釈については、重要な判決が出ていますのでその概要をご紹介します。

 

レンタルオフィス事件の概要

この裁判ではいくつか争点がありましたが、その中でX社から借りていた『オフィススペース』は実体基準を満たしているか?という争点がありました。

 

概要は下記の通りです。

① シンガポール現地法人「S社」の発行済み株式総数7,800株のうち、7,799株を日本の居住者であるA氏が保有、1株をシンガポール居住者のB氏が保有

② S社は精密部品の受注発注という形態による小規模な卸売業を行っている

③ S社はB氏が社長を務めるX社と「オフィススペースの賃貸借」「 周辺事務業務(経理・総務・営業事務)の 業務委託」「営業担当者の派遣」を内容とする業務委託契約を口頭により締結

④ X社の提供するレンタルオフィス内に机1台分のオフィススペース(机,椅子,棚,固定電話を含む。)を賃借し、S社の営業担当者が営業活動を行うために当該オフィススペースを使用していた

⑤ 当該オフィススペースの賃借料は、S社がX社に支払っていた「業務委託料」名目の支払の中に含まれていて、財務諸表上は「賃借料」の計上はなかった

⑥ S社は受注発注の取引であるため、滞留在庫を抱えることは稀であるが、製品が到着してから各顧客に出荷するまでの数日から1週間程度は、S社が製品を保管し製品及び顧客ごとに随時入荷又は出荷をする必要があることなどから、シンガポール国内にある倉庫内にS社が取り扱う精密機械部品の保管場所を確保し、必要なスペースを賃借していた

 

このような状況で、実体基準を満たしているかが争われました。

 

『実体基準』の解釈

判例では、実体基準の考え方について下記の通り述べられています。

『実体基準が物的な側面から独立企業としての実体があるかどうかを判断する基準であるとすれば、固定施設を有しているというためには、特定外国子会社等が賃借権等の正当な権原に基づき固定施設を使用していれば足り、固定施設を自ら所有している必要はないものと解される。』

また、『実体基準を満たすために必要な固定施設の規模は、特定外国子会社等の行う主たる事業の業種や形態により異なると考えられるため、特定外国子会社等が使用している固定施設が必要な規模を満たしているか否かについては、特定外国子会社等の行う主たる事業の業種や形態に応じて判断されるべきである。』

 

東京地方裁判所における判決

上記の実体基準の解釈に基づいて、東京地方裁判所ではこのような判決となっています。

『S社が小規模な卸売業であることに照らすと、必要となる事務所の規模は小さくて足り、受注発注という形態からするとシンガポー ルにおいて取扱製品を保管する必要がほとんどないものと考えられる。

従って、S社が使用していたレンタルオフィススペースや専用執務室、倉庫スペースは事務所及び倉庫としては必要な規模と考えられ、S社は主たる事業である精密機械部品等の卸売業を行うために十分な固定施設を有していたものと認められ、実体基準を満たしてい るものと認められる。』

(参考)東京地方裁判所 判決書全文(レンタルオフィス事件)

 

業種・事業形態に応じて結論は変わってくる

上記判例の通り、レンタルオフィスについて「実体基準」を満たしているかどうかは、業種・事業形態等に応じて結論は変わってくると考えられます。

従って、上記解釈を参考にしながら、「実体基準」を満たしているかどうかをケースごとに判断していく必要があるでしょう。

 

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