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中国で来料加工を行う香港子会社はタックスヘイブン対策税制の適用除外基準「所在地国基準」を満たすか?

タックスヘイブン対策税制の概要

国際税務で取り上げられることの多い『タックスヘイブン対策税制』。この税制は、税率の低い国への所得移転による租税回避を防止するために設けられたものです。

所定の要件に該当する外国子会社の所得について日本の税率で課税する、という税制です。

つまり、この税制の対象となる場合は海外子会社の所得に対しても日本の税率で課税されることになりますので、税務上のメリットを受けられないことになってしまいます。

ただし、「適用除外要件(改正後は「経済活動基準」)」を満たせば、一部の例外を除き、この税制の適用からは除外されることになります。低税率国であったとしても、ペーパーカンパニーではなく、実態をもってビジネスを行っているのであれば対象から除くことが「適用除外要件」が置かれている主旨になります。

※なお、平成29年度税制改正大綱において、タックスヘイブン対策税制も抜本的な見直しが行われる予定です。

【平成29年税制改正大綱】外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正

 

経済活動基準の一つである「所在地国基準」

この「適用除外要件(改正後は「経済活動基準」)」の一つに「所在地国基準又は非関連者基準」というものがあります。

経済活動基準の判定イメージ(平成29年度税制改正大綱に基づく)は下記の通りです。

タックスヘイブン改正後

 

所在地国基準・非関連者基準のどちらの基準が適用されるかは事業内容で分かれています。

外国関係会社の主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業又は航空運送業である場合は、「非関連者基準」が適用され、これら以外である場合は、この「所在地国基準」が適用されます。

所在地国基準とは、製造業の場合は「主として本店所在地国において行っていること」が条件とされています。

どちらの基準が適用されるのかについて、実務上問題になる論点として「広東省型来料加工」があります。

1990年代から急速に普及した広東省型来料加工(香港法人が中国華南地域との間で行う来料加工)を行う香港子会社について、製造業に該当するのか、それとも卸売業に該当するのかという解釈についての議論です。

もし、製造業に該当する場合、製造業は主として中国国内で行われているため所在地国基準を満たさない、となってしまうのため、実務的に大きな税務リスクとなります。

 

中国で来料加工を行う香港子会社の問題

その具体的な議論の内容をこちらです。

(参照)国税庁ウェブサイト「来料加工とタックスヘイブン対策税制」

『日本法人の香港子会社が中国・広東省の法人に対して原材料を無償支給して加工を委託する「来料加工」と呼ばれる取引について、香港子会社は卸売業と製造業とのいずれの事業を行っているかという点についてである。事業の相違による課税への影響は、タックスヘイブン税制の適用除外にある。すなわち、香港子会社の事業が卸売業であれば、同税制の適用除外要件の一つである非関連者基準が適用され、非関連者との取引が50%を超える場合、その要件を満たす。一方、製造業であれば所在地国基準が適用され、製造業を主として本店所在地国等以外の国等で行っている場合、その要件を満たさず外国子会社合算課税が行われる。』

 

この問題の結論として、国税庁ウェブサイト「来料加工とタックスヘイブン対策税制」では、このように述べられています。

『広東型来料加工を行う香港子会社の事業は、契約の評価及び日本標準産業分類からみて製造業に該当し、制度の趣旨からみても所在地国基準の適用が相当であり、香港子会社は製造業を主として本店所在地国等において行っていないことから外国子会社合算課税を行うことは適法である。』

つまり、中国本土で来料加工を行う香港子会社は製造業に該当し、所在地国基準を満たす必要があるが、製造は主として中国でおこなっており本店所在地国である香港では行っていないため、所在地国基準を満たさない。結果として、タックスヘイブン対策税制に基づく合算課税が行われるべきである、ということです。

過去にも度々同様の案件は争われており、実際に上記のような裁決がされた事案もあります。

従って、実務上は大きな税務リスクを伴うため、来料加工を行う場合はこの論点について懸念されていました。

 

平成29年税制改正大綱における改正

上述のように、「広東省型来料加工」についてタックスヘイブン対策税制の適用除外基準(所在地国基準)の解釈が争われる事案が多数あったという背景から、平成29年度税制改正大綱において、下記の通り所在地国基準についての改正も含まれています。

『製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められるものの所在地国基準の判定方法について、所要の整備を行う。』

 

平成29年税制改正により所要の整備が行われることにより、今後実務的に解釈の相違による税務リスクが軽減されることが期待されます。

 

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