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税理士書面添付制度のメリット ~税務調査が省略される可能性も~

税理士の書面添付制度とは

税理士法33条の2及び35条に書面添付制度について規定されています。

この税理士法33条の2に規定されている『計算事項等を記載した書面』を確定申告書に添付している場合、税務署の職員があらかじめその者に日時、場所を通知して、その内容及び帳簿書類を調査する場合には、税務代理権限証書を提出している税理士に対して、その通知をする前に、添付書面に記載された事項に関して意見を述べる機会を与えなければならない、とされています。この意見聴取については税理士法35条第1項に規定されています。

つまり、税務代理権限証書と33条の2に規定される書面を提出している税理士に対して、日時と場所を通知して税務調査を行う前に意見を述べる機会が与えられる、という制度です。

なお、日時と場所を通知しない無予告調査が行われないわけではない点は注意が必要です。

以下、参考条文です。

 

税理士法第33条の2

1. 税理士又は税理士法人は、国税通則法第16条第1項第1号に掲げる申告納税方式又は地方税法第1条第1項第8号若しくは第11号に掲げる申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成したときは、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。

2.税理士又は税理士法人は、前項に規定する租税の課税標準等を記載した申告書で他人の作成したものにつき相談を受けてこれを審査した場合において、当該申告書が当該租税に関する法令の規定に従つて作成されていると認めたときは、その審査した事項及び当該申告書が当該法令の規定に従つて作成されている旨を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。

3.税理士又は税理士法人が前2項の書面を作成したときは、当該書面の作成に係る税理士は、当該書面に税理士である旨その他財務省令で定める事項を付記して署名押印しなければならない。

 

税理士法第35条

1.税務官公署の当該職員は、第33条の2第1項又は第2項に規定する書面(以下この項及び次項において「添付書面」という。)が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与えなければならない。

2.添付書面が添付されている申告書について国税通則法又は地方税法の規定による更正をすべき場合において、当該添付書面に記載されたところにより当該更正の基因となる事実につき税理士が計算し、整理し、若しくは相談に応じ、又は審査していると認められるときは、税務署長(当該更正が国税庁又は国税局の当該職員の調査に基づいてされるものである場合においては、国税庁長官又は国税局長)又は地方公共団体の長は、当該税理士に対し、当該事実に関し意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、申告書及びこれに添付された書類の調査により課税標準等の計算について法令の規定に従つていないことが明らかであること又はその計算に誤りがあることにより更正を行う場合には、この限りでない。

3.国税不服審判所の担当審判官又は地方公共団体の長は、租税についての不服申立てに係る事案について調査する場合において、当該不服申立てに関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、当該税理士に対し当該事案に関し意見を述べる機会を与えなければならない。

4.前3項の規定による措置の有無は、これらの規定に規定する調査に係る処分、更正又は不服申立てについての決定若しくは裁決の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。

(参考)国税庁ウェブサイト『書面添付制度について』

 

書面添付制度を利用した場合のメリット

書面添付制度を利用した場合のメリットとしてまず第一に挙げられるのが、『調査省略』になる可能性がある点です。

上述の通り、調査に入る前に税理士への意見聴取が行われることになりますが、その意見聴取の結果として、税務調査に移行するケースと調査省略となるケースがあります。

『調査省略』となれば会社にとってメリットがあると言えます。

また、税理士側としては積極的には取り入れたくないという税理士もいるかもしれませんが、考え方によってはメリットがないわけではありません。書面添付制度は税理士の権利であり、税務署に対して税理士の意見を表明できる機会が拡大することを意味しているため、関与先との信頼関係が深まり専門家としての地位が向上することが期待できます。

さらには書面添付制度を設けることにより、税理士事務所全体の業務のクオリティの向上やコンプライアンスを考える上でも効果が期待できます。

 

書面添付制度の普及率

国税庁の発表によると、最近の書面添付割合は下記の通りとなっています。

国税庁の取り組みにより、年々割合は増加していますが、それでもまだ書面添付割合は低いと言えます。

<平成25年度>

法人税: 8.1%

所得税: 1.1%

相続税: 8.9%

 

<平成26年度>

法人税: 8.4%

所得税: 1.1%

相続税: 11.8%

(参考)平成26事務年度 国税庁実績評価書

 

もちろん虚偽記載は税理士法違反

上述の通り、書面添付制度を利用することによりメリットもあると考えられますが、もちろんその書面の虚偽記載は税理士法第46条に該当し、懲戒処分の対象となるため注意が必要です。

島田&アソシエイツ国際税理士事務所では、積極的に『書面添付制度』を導入しております。書面添付制度を利用されたい方はお気軽にお問い合わせください。

 

 

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