国際税務コラム

シンガポール租税条約

2018年1月1日~: シンガポールとカンボジアの租税条約 適用開始

※ 2018年4月1日 更新(2017年12月29日に発効)

 

2018年1月1日~ シンガポールとカンボジアの租税条約 適用開始

シンガポールと日本の租税条約については、「シンガポールは何か国と租税条約を締結しているか?」でご紹介致しましたが、シンガポールは新たに2016年5月20日 カンボジアとの租税条約に署名しました。まだ、発効・交付には至っていませんので効力はありません。

→2017年12月29日に発効、2018年1月1日から適用されることになりました。

 

カンボジアは今までどの国とも租税条約を締結していませんでした。シンガポールとの租税条約が2018年1月1日から適用が開始されましたので、シンガポールを経由したカンボジアへの投資拡大が期待されます。

 

シンガポール・カンボジア租税条約(英語)

 

なお、カンボジアとタイとの租税条約も2018年1月1日から適用開始がされます。カンボジアは今後も各国との租税条約の締結を進めていくものと考えられます。

 

カンボジア法人投資への影響

日本とカンボジアの間には租税条約はありませんので、今まで日本本社から直接カンボジア法人へ投資する場合、税務上様々の問題がありました。今後、シンガポールとカンボジアの租税条約が発効・交付されれば、シンガポール統括会社を通して投資を行うことにより租税条約のメリットを享受できる可能性があります。

例えば、カンボジア法人から日本本社・シンガポール法人へ配当を行った場合を比較してみたいと思います。

 

カンボジア法人から日本本社に配当を行った場合

カンボジア法人から日本本社に配当を行った場合、日本とカンボジア法人との間に租税条約はありませんので、カンボジア国内法に基づき、14%の源泉所得税がカンボジアで課税されます(なお、一定の場合には20%課税される場合があります)。

つまり、1,000万円の配当を日本本社に直接行った場合、原則として140万円の源泉所得税がカンボジアで課税されることになります。

 

カンボジア法人からシンガポール法人へ配当を行った場合

シンガポール・カンボジア租税条約では配当について、下記の通り規定されています(一部抜粋)。

つまり、カンボジア国内法では14%の源泉所得税が課税されると規定されていますが、租税条約に基づき10%に軽減されると考えられます。

 

原文(英語) Article10 Dividends

1    Dividends paid by a company which is a resident of a Contracting State to a resident of the other Contracting State may be taxed in that other State.

2    However, such dividends may also be taxed in the Contracting State of which the company paying the dividends is a resident and according to the laws of that State, but if the beneficial owner of the dividends is a resident of the other Contracting State, the tax so charged shall not exceed 10 per cent of the gross amount of the dividends. This paragraph shall not affect the taxation of the company in respect of the profits out of which the dividends are paid.

 

日本語訳 第10条 配当

1    一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2    1.の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って、租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受領者が当該配当の受益者である場合には、当該配当の額の10%を超えないものとする。この2.の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

 

 

どの法人からカンボジア法人へ投資をすべきか

上記では配当について比較をしましたが、日本から投資をした場合とシンガポールから投資をした場合とでは、取引の様々な局面で取扱いが異なってくることが想定されます。

カンボジア法人への投資を行う際にはこの租税条約も考慮に入れて、どの法人(又は個人)から投資を行うべきか慎重に検討する必要があります。